それでも税理士をめざすのか

先週末に、令和元年度税理士試験の結果が発表されました。
合格された方、おめでとうございます。

一方、残念ながら結果が出なかった方もいると思います。
今回の記事は、そんな方たちに向けたメッセージです。

税理士試験の甘い罠

税理士試験には、大きな罠があります。
科目合格制という、甘い罠です。

全科目の総合力で判断され、合計でダメなら不合格となるのが一般的な試験です。
例えば受験では、通常、合否は英語、数学、その他全科目の合計点で判断されると思います。
一方、税理士試験の仕組みに当てはめると、以下のようになります。

1回目は英語だけ受験する。そして合格点に達すれば「英語」はクリア。
2回目は数学と国語を受験する。数学だけ合格点に達すれば「数学」はクリア。
こうやって1科目ずつ積み重ねていき、全科目をクリアしたところで、晴れて合格となるのです。
そして、一度「英語」をクリアしたという事実は、生涯有効になります。

税理士試験の場合、5科目クリアすると、合格となります。
ぱっと見、受験者に優しそうな仕組みですね。

--税理士試験は科目合格制だから、継続すればいつか合格できる。
予備校などがよく使うフレーズですが、私はこうも言えると思います。

--税理士試験は科目合格制だから、1つ受かってしまうとやめられない。

もうひとつの罠

もうひとつ、大きな罠があります。
それは、科目によって受験者のレベルが違うということです。

先ほど、5科目クリアすれば合格と書きました。
受ける順番に決まりはないのですが、たいていの受験者は「簿記論」「財務諸表論」(通称:簿財)から入り、簿財をクリアした人が税法3科目を受験する、という流れを取ります。

すなわち、
・簿財は「主に1科目も受かってない人が受ける」
・税法は「主に何科目か合格している人が受ける」
ということになります。
当然、後者のほうが受験者のポテンシャルは高くなります。

プロ野球に例えるなら、
・全選手の中から、1軍に上がるまでが簿財
・1軍の選手の中から、スタメンを勝ち取るまでが税法
です。

アイドルに例えるなら、
・グループ全員の中から、選抜に選ばれるまでが簿財
・選抜の中から、センターに選ばれるまでが税法
です。

どちらも確率は同じだとしても、難易度は明らかに違います。
もちろん得意不得意はあると思うので、簿財で苦戦したけど税法をあっさりクリアするような人も中にはいると思いますが、一般的には税法ではまり込む人のほうが多いでしょう。

罠はさらなる罠となる

そして、ここで最初の罠がさらに大きな罠になるのです。

税理士試験は科目合格制だから、1つ受かってしまうとやめられない。
そして、3つめ4つめより、1つめ2つめのほうが、受かりやすい。
そもそも受験者のレベル的に簿財のほうが受かりやすいのに、最近では合格率も簿財のほうが高くなっています。

たぶん確信犯だと思います。
悪い言い方をすると、最初に科目合格という甘い経験をさせて、抜け出せなくするのです。

一般的な試験の場合、落ちたら過程で得た経験は別として、結果としては何も残っていません。
いい思いをしていないから、比較的諦めもつきやすいと思います。

ギャンブルでも、負け続けていたら、やめる人が大半でしょう。
でも、一度勝ってしまったがゆえに抜け出せなくなる。

圧倒的…沼っ…
ざわ…ざわざわ…

某漫画風に言うとこんな感じでしょうか。
結果を出すためにかなりの努力をしている分、ギャンブルより深い沼かもしれません。
努力して2科目取ったのに、そこでドロップアウトするという決断はなかなかできないと思います。

伝えたいこと

前置きが長くなってしまいましたが、別に受験やめたほうがいいんじゃない?と言いたいわけではありません。
ただ、よく考えてほしいのです。

人間これまで続けてきたことは、なんとなくこれからも続けてしまうという傾向があると思います。
一定の結果が残っていたら、なおさらです。

でも、よく考えてみてください。
院免等の話はいったん置いといて、仮に5科目合格をめざすとしたら、
もし1科目取るのに5年かかったとしたら、税理士になるには単純計算で25年かかります。

25歳から受験を始めたとしたら、取れるのは50歳です。
年々体力も記憶力も低下していくことや、後半の科目のほうが受かりにくい特性を考えれば、期待値的にはもっとかかるのかもしれません。

この1年間、どれだけの時間を犠牲にしたのか。
冷静に考えて、あと何年やれば合格できそうなのか。
自分にとって、税理士という資格は、それだけの時間をかける価値があるのか。

将来、仮に資格が取れたとしても、それまでにかけた時間は戻って来ません。
別の道を選んで、もっとプライベートを満喫したほうが幸せだったかもしれない。
受験に集中しすぎたせいで、婚期を逃してしまうかもしれない。
資格の代わりに失ったもの、たくさんあるかもしれません。

私は幸い結果も出ましたし、得られたもののほうが大きかったと思っているので、後悔とかはまったくないのですが、それでもこの道に進まなければこうなっていたかも、なんて思うことはあります。

望んだすべてをつかめる人なんていないと思いますが、ただなんとなく継続して、時間が過ぎて、いつの間にか失っていたというのはとても不幸なことだと思うので、もしあまり深く考えずに進んできたのなら、一度自分と向き合って、考えてみてほしいと思います。
そしてしっかり向き合った上で継続する決断をしたのなら、それは素晴らしいことだと思いますし、きっとなんとなく継続していた時より、結果もついてくると思います。
これは受験に限らず、あらゆることに言える話かもしれませんね。

ちょうど合格発表があったのと、年末年始はいろいろ考えるにはいいタイミングかなと思い、今回書かせていただきました。

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