アフターコロナの世界2
いらっしゃいませー!
元気な男性の声が響き渡る。
ここは街外れの飲食店。
今日も多くの客で賑わっている。
着席した客は、パネルで料理を選んでいる。
データがキッチンに送られ、調理が始まる。
席に料理が運ばれる。
客は舌鼓を打ち、やがて席を立ちあがる。
いらっしゃいませ。
落ち着いた女性の声が響く。
ここは街外れの飲食店。
今日も多くの客で賑わっている。
ここは未来の飲食店。
店員の姿は、見当たらない。
未来の飲食店
こんにちは、こんばんは、上田です。突然ですが小説家デビューしました。すみません冗談です。ブログで勝手に書いてるだけなので許してください。
茶番はこれくらいにして、早速ですが、これは私が思い描く「未来の飲食店」です。50年後か100年後か、はたまたさらなる未来か。いつのことかはわかりませんが、いつかはこういう日が来るのではないかと思っております。
今と変わらないように見える飲食店ですが、最後の一文だけ違います。店員がいない。さて、いったいどういうことなのでしょうか。
・入店時の声
実際の飲食店ぽくなるよう、あえて2種類の異なる声を描きました。これは簡単ですね。いろんな声を録音しておけばいいだけです。そしていくつかある録音の中からランダムで流れるようにすれば、あたかも何人も店員がいるような雰囲気を醸し出すことができます。
・パネルで料理を選ぶ
これは今でも主流になりつつありますので、特に違和感はないでしょう。
・キッチンで調理が行われる
ここからが本番です。店員がいないのに調理される。では誰が?
ロボットでしょうか。いえ、違います。キッチンそのものに調理の機能が備わっています。
パネルから料理を選択してキッチンへデータが送られます。例えばハンバーグを選んだとしましょう。
すると、キッチンにデータとして登録されている「ハンバーグのレシピ」を元に、食材を混ぜ合わせ、自動で調理を行います。
食材が格納された保管庫が備わっています。例えば1番の保管庫には「豚ロースの小間切れ肉」2番には「豚バラの薄切り肉」3番には「豚のひき肉」があるとしたら、ハンバーグですので3番に信号を送り3番の保管庫から材料を取り出します。
同じようにいくつかの保管庫から材料を取り出したら、あとは「どのくらいの火力で」「何分焼く」「何分煮る」みたいな工程ですから、コンピュータが実行するのは不可能ではないように思います。「大盛り」などのオプションも、材料の量や調理時間が変わるだけですから、難なく対応可能でしょう。
要するにキッチンに「自動で調理するシステム」と「スーパーマーケットが丸ごと入ったような食材の備蓄システム」が備わっているということです。
・席に料理が運ばれる
運ぶ人がいません。では誰が?
ロボットでしょうか。いえ、違います。キッチンと客の座るテーブルが裏でつながっています。
いろいろやり方はありそうですが一番イメージしやすいのは床下を通すやり方でしょうか。キッチンで自動調理し、内部でお盆に載せて下降させ、ベルトコンベアみたいな形で床下を移動させてダイニングテーブルに移動。テーブルの一部がウイーンと横にスライドしてそこから料理が出てくるみたいなイメージです。
床下を通すというと衛生面が気になりますが、こんな技術ができる時代ならその辺はどうとでもなるでしょう。
もう少し掘り下げてみる
・食材の格納
これはオーナーが普通に買ってきて手動でボックスに入れればよいと思います。
が、例えばスーパーマーケットと店のキッチンを地下でつなぐことができれば、食材を自動で送ることも可能かもしれませんね。
・レシピの登録
キッチンに登録機能があって、シェフが工程をデータとして登録するだけです。
①8番の材料を100g取り出し中火で5分焼く
②5番の材料を50g加え、弱火で3分焼く
…みたいな流れですね。
・より人間らしく
コンピュータがやると正確すぎて、良くも悪くも毎回まったく同じ味になってしまいます。
そこでオプションとして「ブレ機能」をつけます。これをつけると「材料や調味料の量がランダムで±10%ぶれる」「調理時間がランダムで±10%ぶれる」ようにできます。これにより人間が作っているような、毎回少し違う料理を楽しむことができます。
・キッチンシステムがものすごく高そう
私もそう思います。でも、最初はものすごく高そうなものでも、いつしか値下がりしていくものです。パソコンだって30年前には50万とかしたものが、今なら10万もしないで当時よりはるかに高性能のものが手に入る。そう考えれば、最初は超大手しか手を出せないようなものだったとしても、そのうち汎用的なものになっていくのではないでしょうか。
そもそも飲食店に行く必要がないのでは
そして最終形です。このシステムが実現するのであれば、そもそも店がいらなくなると思います。
例えば自治体が運営するセントラルキッチンがあって、そこと各自宅のダイニングテーブルがつながればいいのです。ネックになりそうなのは運ぶ距離と運び方ですが、床下が地下に変わるだけだし、保温技術も格段に進歩してるでしょうから、距離的なものはどうとでもなるでしょう。
キッチンシステムの導入コスト的なものについては、個人の飲食店よりも、財源の大きさを考えるとむしろ現実味を帯びてくるように思います。
・レシピの登録は?
シェフから素人まで、誰もが登録できます。一言で言えば「クックパッドがそのままセントラルキッチンのレシピになります」。で、クックパッドに「このレシピを食べる」機能が加わればいいわけですね。ポチっと押すと、信号がキッチンに送られ、クックパッドのレシピがそのまま自動で調理され運ばれてきます。
主婦の方が作ったレシピから、超有名料理店のレシピまで。もちろん最初はお店を持っている方は登録なんてしないでしょうが、店をたたむような年齢になったら「どうせもう売上立たないんだし、登録してみんなに楽しんでもらおう」と考えるシェフもいるかもしれません。
そうこうしているうちにどんどんレベルが上がっていき、最終的には店の需要がなくなってセントラルキッチンに集約化される。そして、料理をするという行為自体がなくなっていく。
私たちが生きてるうちには実現しないと思うので、飲食店の未来は暗いとか、そういう話ではないです。ただ、いつかはそんな時代が来るんじゃないかなと、そんなことをぼんやり感じたりします。
今回は飲食にスポットを当てて書いてみましたが、たぶんいろんなものが自動化され、人は何もしなくてよくなっていくのだと思います。そうなった時、人はどうなるのか。
とても便利で魅力的な世界にも見えますが、一方で人と人とのつながりは希薄化され、それはそれでつまらないようにも感じるのは、現代人だからでしょうか。
いろんなこともありましたが、それでも生きてる時代が今でよかったのかなと、そんなことを感じる2020年なのでした。