税理士事務所っていろいろあるけど、どこがいいのかわからない…。そんな悩みにお応えするため、一税理士の観点から、アドバイス致します。
大規模事務所のメリット
事務所を選ぶ大きなポイントとしては、やはり事務所の規模が挙げられます。これはお客様のニーズによって変わってくるので、一概にどちらがいいとは言えません。なので、それぞれのメリットを考えてみたいと思います。まずは大規模事務所から。
・規模が大きいという安心感
例えば車を買うとして、大きな会社が作っている車と見知らぬ会社が作っている車、どちらが安心感があるでしょうか。
もしかしたら後者が凄い技術を持っていて、乗り心地もアフターサービスも最高かもしれません。それでも前者と答える方が大半だと思われるのは、 ネームバリューや組織力という無形の安心感があるからだと思います。
実際は必ずしも大きいから安心だということはないのですが、この「なんとなく安心できる気がする」というのは、ふわふわしているようで、とても大きなものです。
・事例が蓄積されている
税法は複雑なので、見たことのないような事例もしばしば出てきます。その点、基本的には大きな事務所ほど、多くの事例の蓄積があると考えられます。
きちんと共有されていればという前提はつきますが、 過去の事例を転用することで、早期に問題を解決できるというようなこともあるかもしれません。
・複数人で対応できる
クライアントに対して何名で対応するかは、事務所によっても、またクライアントの規模によってもまちまちだと思いますが、何かあった時に複数人で対応できるというのは大きいと思います。
また、そもそも大勢でないと対応できないような規模のお客様の場合は、必然的に大規模事務所に依頼することになるでしょう。
小規模事務所のメリット
続いて小規模事務所のメリットを考えてみます。大規模と小規模の線引きは難しいところですが、ここではわかりやすくするため、所長1人で運営している個人事務所を前提に考えてみましょう。
・所長の顔が見えるという安心感
組織が大きくなればなるほど、上の人が現場に顔を出さなくなることが多くなるでしょう。クライアントが多すぎて全部に顔を出している時間がないので、出したくても出せないと言った方が正しいでしょうか。
なので普段は担当者が応対することが多く、もちろん重要な事項は上に伝達されているとは思うのですが、それでも上の人が顔を出さないことに不満を感じる方もいらっしゃるようです。
個人事務所の場合、常に所長の顔が見えるので、それが安心感につながるという考え方があります。
・地域に密着している
個人事務所の場合、愛着のある地域で開業する場合が多いと思います。もちろん大規模事務所も地域に根付いているとは思うのですが、所長にとってはそうだとしても、従業員にとっては地元のほうが愛着があるという場合も多く、地域性という点では、個人事務所に一日の長があると言えるでしょう。
・担当者が変わらない
この業界に限ったことではありませんが、退職や人事異動によって突然担当が変わるというのは、ままあることだと思います。
同じ事務所だとしても、人が変わればまた1から関係を築いていかないといけないし、前任者に話したことがどの程度引き継がれているかもわからない。何より親身に対応してくれた人がいなくなるというのは寂しいもので、基本的には担当はなるべく変わってほしくないという方が大半だと思います。
その点個人事務所であれば、すべて所長が担当ですから、引退しない限りは担当が変わることはありません。それこそ同年代であれば、生涯に渡ってサポートを得ることができるでしょう。
情報は「流し読み」
他に大きなポイントを挙げるとすれば、やはり事業内容や経営理念が自分のニーズと合致しているかといったところが挙げられると思います。これらはホームページやパンフレットに載っていますので、そういったツールを活用するのがよいでしょう。
…が、私はあまり細かく読むのはおすすめしません。というのも、広告ツールなのでよさげなことしか書いてないのは当然ですし、読めば読むほど、どこも同じようなことが書いてある気がしてきます。そして、最終的には疲れて「もうどこでもいいや」と思ってしまう…。これでは本末転倒です。
それよりも、ここはひとつ肩の力を抜いて、流し読みしてみるのはいかがでしょう。その上で目に留まるものがなければそれまで。何か感じるものがあれば、自然と目が留まり「なんだこれは」→「なんかよさそう」という風に変化していくものだと思います。
病院などと違って、税理士はどうしても今日決めなければいけないということは少ないでしょうから、肩の力を抜いて、気楽に探していきましょう。
とりあえず面接してみる
とはいえ、なかなか結論を出すのは難しいですよね。
見た情報だけで決めなければいけないわけではありません。事務所に「税理士を探していて、とりあえず面談してみたい」と連絡すれば、たいていは受けてくれるでしょうから、迷ったらとりあえず「面接」してみるのが一番だと思います。
就職活動の面接だと、変なことを聞いたら落とされるかもしれないといったことが頭をよぎり、聞きたいことをストレートに聞けない場合も多いと思うのですが、この面接は別です。その事務所じゃなきゃいけない理由はないのですから、ざっくばらんに聞いてしまいましょう。そのほうが、相手の自然な人柄も見えてくるはずです。
最後は「直感」
最後になりますが、最終的な判断材料となるのは、結局「直感的にいいと思えるかどうか」だと思います。
例えば私も開業するにあたり、いろんな業者さんにお世話になっているのですが、 同じ業種、例えばパンフレットを1つ作るにしても、業者さんのホームページを拝見すると、トップページのデザインだけでも結構な違いがあります。
それを見て、直感的にいい雰囲気だなと思うこともあれば、逆に感じることもありました。文章もさることながら、全体的なレイアウトとかで、なんとなく方向性みたいなものが見えてくるんですよね。
ものすごくざっくり言うと、ギラギラしてるかほんわかしてるか。
前者に魅力を感じる人もいれば、後者に魅力を感じる人もいるので、どちらがいいということではなく、これは完全に好みの問題だと思います。
人間、どうしても相性というものはあります。 だからこそ、口コミだけでは図れない、自分の感覚が大事なのではないでしょうか。
まずは規模感などのざっくりしたイメージを固め、気楽に情報を集め、面接に臨む。そうやって得たものから、最後は直感で決める。これが私の提案する「事務所の選び方」です。
皆様がよい税理士に巡り合えることを、心からお祈りしております。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。